士業

繁忙期の税理士事務所を救うAI — 確定申告シーズンを乗り切った3つの工夫

|読了 9分

確定申告期、税理士事務所は戦場になる

毎年1月から3月にかけて、税理士事務所は文字通りの修羅場です。顧問先からの電話が朝から晩まで鳴りっぱなし。「医療費控除ってどの書類がいるの?」「ふるさと納税の証明書なくしたんだけど」「申告期限っていつまで?」——こういった質問が1日に何十件と飛んでくる。

正直、ベテランの所員からすれば「それ、去年も同じこと聞かれたな」という内容が大半なんですよね。でも顧問先にとっては年に一回のことだから、毎回初めてみたいなもの。丁寧に答えないわけにはいかない。

ある事務所の繁忙期の実態

埼玉県で個人事業主を中心に約120件の顧問先を抱えるD税理士事務所。所長含めスタッフ5名の事務所です。2025年の確定申告期には、1月〜3月の3ヶ月間で約1,800件の問い合わせが集中しました。1日あたり平均30件。スタッフ1人あたり6件。申告書の作成をしながら合間に電話を取る生活が3ヶ月続くわけです。

D所長はこう振り返ります。

「2月後半になると、所員の顔から笑顔が消えるんです。残業が増えて、ミスも出始める。でも顧問先への対応を後回しにはできない。毎年このジレンマに悩んでいました。」

AI導入のきっかけは「同業者の雑談」

D所長がAI導入を考え始めたのは、2025年の夏に参加した税理士会の研修後の懇親会。隣に座った同業者が「うち、去年の繁忙期にチャットボットみたいなの入れたんだけど、結構よかったよ」と話していたのがきっかけだったそうです。

その場では半信半疑だったD所長ですが、帰ってからネットで調べてみると、士業向けのAIアシスタントサービスがいくつか見つかりました。その中で業種特化型のナレッジベースが用意されていたマカセAIに興味を持ち、10月頃に問い合わせ。11月から構築を始めて、12月下旬にテスト稼働、1月の確定申告シーズン開始と同時に本格運用を開始しました。

工夫1:よくある質問を「先回り」でAIに登録

D事務所がまず取り組んだのは、過去2年分の問い合わせ記録を洗い出す作業です。電話メモやメールの履歴を所員全員で持ち寄り、カテゴリ分けしたところ、驚くべき傾向が見えました。

  • 必要書類に関する質問:全体の約28%
  • 申告期限・スケジュール:約18%
  • 控除制度の基本的な質問:約22%
  • 料金・費用に関する問い合わせ:約12%
  • その他(個別相談が必要なもの):約20%

つまり、約80%の問い合わせは定型的な回答で対処できる内容だったんです。これをAIのナレッジベースに登録していきました。

具体的には、「確定申告 必要書類 個人事業主」「医療費控除 対象 どこまで」「ふるさと納税 ワンストップ 確定申告 違い」といった質問パターンと、それに対する回答を約150パターン用意。税制改正で変わった部分は特に注意して、2026年の最新情報に更新しました。

工夫2:AIと人間の「守備範囲」を明確にする

D事務所が特に気をつけたのは、AIに任せる範囲と、人間が対応する範囲の線引きです。

AIが対応する問い合わせ

  • 確定申告の必要書類リスト(事業形態別)
  • 申告期限や届出期限の案内
  • 各種控除制度の一般的な説明
  • 事務所の営業時間・アクセス情報
  • 面談予約の受付
  • 料金の目安案内

人間が対応する問い合わせ

  • 個別の税務相談(節税アドバイスなど)
  • 申告内容の確認や修正
  • クレーム対応
  • 新規顧問契約の詳細な相談

AIの回答の最後には必ず「個別のご事情については担当者に確認が必要です。ご予約いただければ詳しくご説明します」という一文を入れるようにしました。これが実は重要で、顧問先に「機械的にあしらわれた」と感じさせないための工夫です。

工夫3:顧問先への事前告知と「使い方ガイド」

3つ目の工夫は、意外と見落とされがちなポイントです。D事務所では、AI導入前に顧問先全件に案内文を送付しました。

「確定申告期間中の問い合わせ対応をよりスムーズにするため、よくあるご質問についてはAIアシスタントが24時間お答えできる体制を整えました。緊急のご相談や個別のご質問は、これまで通り担当者が直接対応いたします。」

この案内と一緒に、Webサイト上のAIチャットへのアクセス方法を図解した簡単なガイド(A4で1枚)を同封。高齢の顧問先も多いため、QRコードも掲載しました。

反応は予想以上に良好だったそうです。「夜中でも質問できるのは助かる」「電話がつながらなくてイライラすることがなくなった」という声が多く、顧問先アンケートでの満足度は導入前と比べて8ポイント上昇

結果:スタッフの残業時間が月平均42時間減少

2026年の確定申告期(1月〜3月)の実績をまとめると:

  • AIが対応した問い合わせ数:約1,100件(全体の約61%)
  • 人間が対応した問い合わせ数:約700件(前年比61%減)
  • スタッフ1人あたりの月間残業時間:平均42時間削減
  • 申告書の処理件数:前年比105%(微増だが、品質向上が大きい)

数字以上に大きかったのは、所員のメンタル面での変化だとD所長は言います。

「今年の繁忙期は、所員から『辞めたい』という相談が一件もなかったんです。過去5年間で初めてのことでした。電話対応のストレスがどれだけ大きかったか、改めて実感しました。」

導入コストは思ったより軽い

D事務所の場合、マカセAIのライトプランを採用。月額29,800円で、初期構築費は別途かかりましたが、IT導入補助金を活用して実質負担は月額1万円台に収まったそうです。

「パート1人雇うより全然安いし、24時間働いてくれる。しかも体調不良で急に休んだりしない」とD所長。繁忙期だけの短期アルバイトを雇う費用と比べても、十分にペイする計算です。

来年の繁忙期に向けて

D事務所では、今年の運用データを分析して、来年の繁忙期に向けたナレッジベースの改善を既に始めています。AIが回答できなかった質問パターンを洗い出し、新たに30〜40件の回答を追加する予定とのこと。

税理士業界全体でみると、AI活用はまだまだこれからという印象があります。でも、D事務所のように「まず定型質問の自動応答から」という小さな一歩が、繁忙期の働き方を根本から変える可能性がある。同じような課題を抱えている事務所は、来年の繁忙期前に検討してみる価値があるんじゃないかと思います。

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