デジタル化の第一歩は「受付AI」から — IT苦手な経営者のための導入記
正直に言います。私はITが苦手です。
これを書いている私(仮にGとします)は、東京都大田区で金属加工の町工場を経営しています。従業員8名。父から引き継いで15年。NC旋盤やマシニングセンタは使いこなせますが、パソコンは見積書を作るときくらいしか触らない。スマホもLINEと電話がメインで、アプリを新しく入れるのは年に1回あるかないか。
そんな私が、なぜAI受付を導入することになったのか。その経緯をありのまま書いてみようと思います。同じようにITが苦手で、でも「何かしなきゃ」と感じている経営者の方に、少しでも参考になれば。
きっかけは取引先からの一言
2025年の夏、長年の取引先であるH精機の部長から、打ち合わせの後にこう言われました。
「Gさんのところ、Webサイトから問い合わせても返事が2〜3日かかるよね。急ぎの試作だとちょっと困るんだよな。最近は別の加工屋さんに頼むこともあって。」
正直、頭を殴られたような気分でした。うちのWebサイトは5年前に知り合いの印刷屋に作ってもらったもので、問い合わせフォームからメールが飛んでくる仕組み。でもそのメールをチェックするのは私だけで、現場に入っている日は見るのが夕方になる。時期によっては翌日になることもある。
H精機との取引は年間で約800万円。それが少しずつ別の会社に流れているとしたら、問い合わせ対応の遅れが直接的な売上減少につながっていることになる。
「DX」という言葉への拒否反応
H精機の件で危機感を覚えた私は、商工会議所で開催された「中小企業のDXセミナー」に参加してみました。が、正直ほとんど理解できなかった。「SaaS」「API連携」「クラウド」……。カタカナばかりで、自分の工場にどう関係するのかピンとこない。
隣に座っていた同年代の印刷会社の社長も同じ気持ちだったらしく、休憩時間に「なんか難しいね」と苦笑い。二人して「うちみたいな小さい工場は、こういうの向いてないのかな」と。
でもセミナーの最後に講師が言った一言が引っかかりました。
「DXの第一歩は、全部を一度にやろうとしないこと。問い合わせ対応の自動化だけでも立派なDXです。」
「受付AI」との出会い
セミナーの後、講師に個別に質問しに行きました。「うちみたいな町工場でも使えるAIってあるんですか?」と。講師からいくつかのサービスを教えてもらい、その中の一つがマカセAIでした。
正直、最初のハードルは「無料トライアルの申し込み」でした。メールアドレスを入力して、パスワードを設定して、確認メールのリンクをクリックして……。たったこれだけのことに15分くらいかかった気がします。ITリテラシーの低さを痛感しました。
設定は「思ったより簡単」だった
ログインしてからの初期設定は、想像していたより遥かに簡単でした。聞かれたのは:
- 会社名と業種
- 営業時間
- よくある問い合わせとその回答
- 対応できる加工の種類
「よくある問い合わせ」は最初何を書けばいいかわからなかったんですが、マカセAIの担当者がZoomで画面共有しながら一緒に設定してくれました。「お客様からどんな質問が来ますか?」と聞かれて、口頭で答えたことをその場で入力してくれる。所要時間は約1時間半。
登録した内容はこんな感じです:
- 対応可能な加工:NC旋盤、マシニングセンタ、ワイヤーカット、研磨
- 対応素材:ステンレス、アルミ、鉄、銅、チタン
- 最小ロット:1個から対応
- 納期の目安:試作は最短3営業日、量産は要相談
- 図面の送付方法:メール添付またはチャットでアップロード
- 品質管理:ISO9001取得済み、測定機器一覧
導入初日の出来事
WebサイトにAIチャットを埋め込んだのは2025年10月の月曜日。埋め込み作業自体は、マカセAIから送られてきたコードを、Webサイトを作ってくれた印刷屋さんに転送して「これ貼り付けてください」と頼んだだけ。30分くらいで完了しました。
その日の夜、スマホに通知が来ました。「新しいお問い合わせがありました」。見てみると、夜の9時過ぎに大阪の部品メーカーからの問い合わせ。SUS304のシャフト加工の見積もり依頼で、AIが素材、寸法、数量、希望納期を全部ヒアリングした上で、「詳細は翌営業日に担当者よりご連絡します」と返している。
翌朝、その情報をもとに見積もりを作って返信したところ、すぐに受注が決まりました。約35万円の案件。
「夜の9時に問い合わせて、翌朝に見積もりが来るなんて対応が早いですね」とお客様に言われたときは、なんだか不思議な気分でした。別に私が夜中に働いたわけじゃない。AIが代わりに聞いてくれていただけ。
周囲の反応
従業員の反応
うちの従業員は50代が中心で、正直AI導入には懐疑的でした。「社長、なんか変なの入れたの?」みたいな反応。でも、AIチャットの応対ログを見せたら「へえ、ちゃんと答えてるじゃん」と少し興味を持ってくれました。
今では、現場から「こういう質問もよく来るから登録しといてよ」と言ってくるようになりました。嬉しい変化です。
取引先の反応
例のH精機の部長からは「最近レスポンス早くなったね」と言われ、発注量が以前の水準に戻りつつあります。
新規の問い合わせも増えました。導入前は月に3〜4件だったWebからの問い合わせが、月8〜10件に。AIチャットの存在自体が「この会社はちゃんとしている」という印象を与えているのかもしれません。
同業者の反応
加工仲間の集まりで話したら、「そんな簡単にできるの?」という反応がほとんど。ITアレルギーがある経営者が多い業界なので、「私みたいなアナログ人間でもできた」というのは結構なインパクトがあったみたいです。実際、その後2社がマカセAIを導入しています。
コストの話
気になるコストですが、うちはライトプランで月額29,800円。町工場の経費としては、正直「安い」と感じています。パート事務員を雇うと月15万円以上。それが24時間対応で3万円弱なら、コスパは良いです。
さらに、IT導入補助金を申請して採択されたので、実質的な月額負担は1万円台です。商工会議所の窓口で相談したら、申請の手続きもサポートしてくれました。
5ヶ月使ってみて、正直な感想
導入から約5ヶ月が経ちました。良かった点と、まだ課題だなと思う点を正直に書きます。
良かった点
- 問い合わせの取りこぼしがほぼゼロになった
- 夜間・休日の問い合わせにも対応できるようになった
- 見積もり依頼に必要な情報が整理された状態で届くので、見積もり作成が速くなった
- 「ちゃんとした会社」という信頼感が生まれた(らしい)
まだ課題なこと
- 特殊な加工方法の質問にはAIが答えられないことがある(ナレッジ追加で対応中)
- 図面をチャットでもらっても、すぐには見積もりが出せない(現場確認が必要)
- ナレッジの更新を私一人でやっているので、忙しいとサボりがち
ITが苦手でも、一歩目は踏み出せる
偉そうなことを言える立場ではないんですが、一つだけ伝えたいのは、DXの第一歩に完璧な準備は必要ないということ。
私はITのことなんてほとんどわかりません。今でもZoomの画面共有がうまくできないことがある。それでも、AI受付の導入はできました。自分一人でやろうとしなければ、そんなに難しくない。サービスの担当者に聞けばいいし、商工会議所にも相談できる。
最初の一歩は、無料トライアルに申し込むこと。それだけです。あとは流れに乗ればなんとかなります。少なくとも、私の場合はそうでした。